トップクラスの海洋科学技術研究機関が選んだ、汎用並列計算機システム

海洋研究開発機構(以下JAMSTEC:Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)は、独立行政法人として、海洋に関する基盤的研究開発やその学術研究に関する協力などに総合的に取り組み、海洋科学技術水準の向上と学術研究の発展をリードする世界トップクラスの研究機関である。地球環境の変動を予測して行う先端的かつ大規模な研究開発も多数進められており、これらに必要な幅広い数値シミュレーションや膨大なデータ処理を高速処理するため、日本SGIの汎用並列計算機システムが導入されている。ここではその導入背景から現在の活用状況について、計算システム計画・運用部のシステム運用グループでリーダーを務める島田敏明氏に伺った。
導入の背景
幅広い数値シミュレーションと膨大なデータ処理が不可欠
JAMSTECは、海洋科学技術の研究開発機関として世界トップクラスに実績を上げている先進的な研究機関である。その研究開発フィールドは広汎で、地球環境観測/予測や地球内部ダイナミクス研究、海洋・極限環境生物研究などの研究、あるいは海洋に関する各種基盤技術開発、シミュレーション研究開発などの開発を行っている。
これらの研究過程では、地球環境の変動を予測するため温暖化や気候変動の予測モデルなどの統合数値モデルの開発や、関連する数値シミュレーションなどが数多く行われる。加えて各種の大型循環モデルや流体系シミュレーション、地震波の波動解析や波動伝播、マルチチャネル地震探査の解析、ゲノム解析など、要素ごとの数値シミュレーションも活発だ。 つまり、JAMSTECが行っている研究開発では、高速かつ大規模なスーパーコンピュータを用いた幅広い数値シミュレーションと膨大なデータ処理が不可欠なのである。しかも、これらの数値モデル計算の結果や膨大な観測データを安定的に管理し、維持していくために、大規模なデータ・アーカイブも必要となる。
「近年、高度に複雑化した数値モデル計算やこれにともなうデータ処理量の拡大、観測データ自体の増大などにより、その計算機リソースが不足し、計算結果のスループットが低下してきました。そこで利用者の要望に確実に応え、さらに将来の計算処理需要やデータストレージ需要にも確実に対応していくべく、システム更新の仕様策定ワーキンググループを立ち上げ次期システムについて検討しました。そして入札の結果、選定・導入したのが、日本SGIの汎用並列計算機システムです」
導入の経緯
徹底した性能評価、機能評価、価格の総合評価による製品選定
JAMSTECの新システム選定が始まったのは、2005年夏。まずJAMSTECより、必要とする要件に基づいた新システムの仕様書が提示された。この仕様書に基づいて各社が提案・入札を行ない、性能評価と機能評価、価格等の総合評価による審査を経て、選考が進められた。
--ではこのとき、JAMSTECが各社に求めた、新システムの仕様とはどのようなものだったのか。前述のとおり、新システムに求められていたのは、超高速の計算能力だけではない。システムはさまざまな汎用的データ処理やスカラー処理、さらに大規模なデータ処理やアーカイビングにも使用される。しかも、JAMSTECが扱う先端的な研究課題自体が、さらに大規模化しつつあったのである。
「ですから新システムに対しては、演算性能の高度化はもちろん、計算/データ規模の拡大に備えた計算プラットフォームの導入や、大規模ストレージ・システムを合理的に配置し、操作性やスループット性能も向上させることが必要でした。つまり、複数の高度な課題をバランスよく解決すること。しかも、よりコストパフォーマンスの高いシステム構成で--と、入札する各社に求めたわけです」
これに対して日本SGIは、スーパーコンピュータ分野における高性能並列計算機の構築と運用にかかわる豊富な経験と実績を基に、超並列Linuxサーバを中核とする新たな汎用並列計算機システムを提案。厳しい性能評価試験等を経て、その優れた機能、性能、そしてコストパフォーマンスのバランスの良さが高く評価され、2006年春、求める要件を満たす新システムとして、SGIの提案する汎用並列計算機が選定された。
選定理由
旧システムの40倍の理論演算性能をもつ共有メモリ型スカラーシステム
この一般競争入札において、各社が提案するシステムの性能評価は、前述の通りJAMSTECが提供するベンチマークプログラム試験によって行われた。そして、各計算機の基本的かつ客観的な性能評価、及びJAMSTECが想定した代表的な作業負荷に関わる実効性能、演算処理能力を測定し比較されたのである。SGIの汎用並列計算機システムが、高いベンチマークの結果を出した。 このSGIの汎用並列計算機システムの中核にあるのは、総計2,560コア/1,280CPUに及ぶデュアルコア インテル® Itanium® 2プロセッサーを搭載した超並列Linux® サーバ、「SGI® Altix® 4700」である。メインメモリは3TBにも達する、この大規模共有メモリ型の超並列サーバの理論性能は16.3TFLOPS。日本SGIが納入したものとしては、国内最大規模となる高性能並列計算機システムだ。新システムはこの「SGI® Altix® 4700」を中心に、高速磁気ディスクアレイシステム(オンラインストレージ1・2、大容量ストレージ)、大容量のテープ保存装置(テープアーカイブ)などが組み合わされており、合計で700TBもの大容量データを保存することが可能となっている。
「このSGIの汎用並列計算機システムは、それまで当機構が使用していたシステムと比較すると、理論演算性能においては40倍近い、大規模な共有メモリ型スカラーシステムとなります。このような高性能なシステムの導入が決まったことにより、スカラー型に適したコードの実行環境も、より大きく充実することが確実でした。各研究者ら利用者が新システムに寄せる期待は非常に大きなものがあったと思います」
導入効果
研究環境の飛躍的な充実とともに、地球シミュレータとの連携にも期待
SGIの汎用並列計算システムが選定され、JAMSTECから正式に日本SGIへの発注が行われたのは2006年4月。ここからわずか5カ月間という短期間の構築により、新システムは2007年9月からJAMSTEC横浜研究所で正式に稼動した。
「稼働まで非常にタイトなスケジュールであり、導入当初の障害などで少々混乱した状況でしたが、SGIのエンジニアの方々には真摯な対応をしていただきました」
安定した運用が行われるようになると、新システムはさまざまな研究開発シーンで威力を発揮し始めた。
「せっかく強力なシステムなのですから、運用する私たちとしては目一杯に使いこなしてほしいという気持ちがあります。実際、利用者も徐々にその威力を実感し始めたようで、運用データを見ると稼働率は右肩上がりで増えています」
さらに今後は、横浜研究所にあるもう一つのスーパーコンピュータ、“地球シミュレータ”との連携による活用にも大きな期待がかかっている。
「たとえば地球シミュレータで走行させる、大規模シミュレーション用のメッシュ生成の前処理など、さまざまな活用方法が考えられます。安定した運用と共に、こうした新しい試みも積極的にサポートしていきたいですね。新システムでさらなる可能性を切り拓いて行きたいと思います」
※本事例の内容は2008年6月現在のものであり、変更されている可能性もありますのでご了承ください。
独立行政法人海洋研究開発機構
〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2番地15 (本部)
〒236-0001 神奈川県横浜市金沢区昭和町3173番25 (横浜研究所)
http://www.jamstec.go.jp/
重点研究と開発:地球環境観測研究、地球環境予測研究、地球内部ダイナミクス研究、
海洋・極限環境生物研究、海洋に関する基盤技術開発、シミュレーション研究開発

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