クラス最高のプラットフォームSGI® Altix® ICE
F1レースに対するホンダの環境配慮のアプローチを支援
※この内容は米国SGI 編集 Feature Story “
SGI Altix ICE In a League of its Own”の翻訳です
ホンダ(Honda)は、多様なモーター・スポーツに参戦してきた歴史と輝かしい実績を誇る企業です。2006年には、BAR Hondaとして知られていたチームの株式を100%取得し、グランプリ・レースでの新たなる勝利の追求にかける同社の強い意思を明らかにしました。
ホンダ・レーシング・チームがグランプリに初めて参戦したのは1964年のことで、ドイツ、イタリア、米国で開催されたグランプリ・レースに1台のレーシングカーで挑みました。翌年、ベルギー・グランプリで初めての世界選手権ポイントを獲得し、続いて、メキシコ・グランプリで初優勝を勝ち取りました。いずれも、アメリカ人ドライバーのRichie Ginther選手による勝利でした。

現在(2007年9月時点)までに、ホンダはグランプリで72勝を重ね、F1世界選手権(FIA Formula One World Championship)では、11タイトル(コンストラクターズ部門で6度の優勝、ドライバーズ部門で5度の優勝)を獲得しています。Honda Racing F1 Team(拠点:英国、ブラックリー)にかかわるすべてのスタッフは、今後もこのような輝かしい実績を残すべく一致団結しています。
CFD(計算流体力学)の進化によるラップタイムの短縮
Honda Racing F1 TeamのCFD部門長であるHenrik Diamant氏は次のように語っています。「フォーミュラ・ワンは、コンマ数秒の違いによってスターティング・グリッドで10ランク優位なポジションを獲得でき、またレーシングカー開発プロセス全体のスピードによって、レースでポイントを獲得できるか、ポイントなしで終わるかの差が出る熾烈な競争の場です。スピードのあくなき追求が行われる中、現在のテクニカル・レギュレーションでは、空気力学がラップタイム短縮のための決定的な鍵を握っています。」

「Honda Racing F1 Teamでは過去数年間にわたり、大規模で複雑な車体のCFDモデルを実行してきましたが、ソフトウェア開発によってこのプロセスが実際に大きく進化したのはごく最近のことです。例えば、車体のCFDモデルを生成するのに、5年前には数週間を要しました。現在では、大部分が自動化されたツールを活用することで、当社のエンジニアは数時間で1つのモデルを作成します。言うまでもありませんが、このように処理量が増えてくると、解析できる車体モデルまたは部品の数は、こうした極めて複雑な計算問題を処理するハードウェアの性能にかかっています。」
ホンダの一般的なグランプリ・レーシングカーは、ホンダの独自設計による約1万種のコンポーネント(ナット、ボルト、ウォッシャなどのすべてのマイナー部品)と、グランプリ・モーターレースのルールにより変更できない約1万3,000点の部品から構成されています。例えば、エンジンはレース出場のために3年間の認証を受けます。つまり、2009年末までは新たな変更が許可されないということになります。また、シーズン開始時にチームが採用したギアボックスについては、技術面の重大な問題または向上がない限り、マイナー変更しか許可されません。また、ドライバーが座るモノコックの構造も、シーズンを通して変更しないことになっています。
ただし、これらの部分を除く事実上すべての部品は、シーズンの途中で随時、開発・改善を重ねていきます。結果として、1年間で約3万点の部品がチームの空気力学の専門家によって設計され、さらに2万点の部品が製図室で設計されることになります。「シーズン終了時のレーシングカーの構造は、空気力学的に見ると、シーズン開始時のものとはまったく別物です。共通部分はなく、フロント・ウィング、リア・ウィングを始め、すべてが変わっています。」とHenrik Diamant氏は語っています。
開発プロセス全体での貢献
レーシングカーの空気力学面の進化を支援すべく、Honda Racing F1 TeamのCFD部門では、自社開発の「ホワイト・ボックス」クラスタを多数使用していました。この背景には、ホンダによるチームの全面取得以前、グランプリ・レースに直接的に関係のない処理も行なっていた同部門では、部門内で予算を確保することが求められており、必要とされた計算リソースを確保するための極めて時間効率・コスト効率の高い手段としてクラスタが選択されたことがあります。

CFD部門の開発プロセスは、通常、エンジニアが車体の改善のアイデアを出し、これに関連した構造がCAD(コンピュータ支援設計)ワークステーションで生成されるという順序で進みます。メッシュ化されたCAD部品は、次に、自動メッシュ生成プロセスで処理されます。これは、今も昔も、スピードアップが最も図られる工程です。そして、CFDモデルが解析され、結果が自動的に出力されます。エンジニアは、この結果データを各自のワークステーションに取り込み、解析します。
Henrik Diamant氏は次のように語っています。「我々の部門は、開発プロセス全体に幅広く貢献しています。我々の作業の一部は、構想に基づくものです。車体の大規模な変更点を解析し、空気の流れを可視化して最大のパフォーマンス向上が見込まれるポイントを特定します。この場合、我々の部門で開発プロセスを効率的に先導していることになります。また、自動プロセスの一環として、構造の細部を微調整する場合もあります。この場合は、プロセスの最終段階の一部として機能することになります。
「現行のシステム環境では、1週間に数十個の異なる構造を解析できます。我々は最近、SGIおよびSGI(R) Altix(R) ICEの導入によって、最大のボトルネックであったハードウェアを改善し、CFDプロセスを高速化しました。」
- Honda Racing F1 Team、CFD部門長、Henrik Diamant氏
ベンチマークで18%高いパフォーマンスを達成
開発プロセスの高速化のためにホンダから予算を配分されるようになったCFD部門は、最適なソリューションを特定すべく、入手可能なテクノロジの広範な調査を実施しました。「プロセッサ数が同じ場合、SGI Altix ICEシステムのパフォーマンスはクラス最高であることがすぐに明らかになりました。」Henrik Diamant氏は続けます。「事実、仕様がほぼ同等に見える2つのシステムでベンチマークテストを実施して、SGI Altix ICEで我々のCFD計算処理を実行した場合のほうが18%も速かったときには、本当に驚きました。我々にとって、これは、スターティング・グリッドでより優位なポジションを獲得できることを意味しています。」

2007年9月に、Honda Racing F1 Teamは、ハイパフォーマンスなAltix ICEを導入しました。同チームは、これにより、2008年の競技シーズンを通して、CFDの貢献度が大幅に高まることを期待しています。Henrik Diamant氏は次のように語っています。「レーシングカーのパフォーマンスを高めるには、より多くの車体のCFDモデルを処理できることが重要ですが、Altix ICEによって、この数が5倍に増加することになります。1週間に解析可能な部品数が増えれば、それに対応したコンマ数秒のスピードアップが可能となり、その結果、競技を優位に戦うことが可能となります。
「解析可能な部品数が増えれば、その分だけ車体を改善できることになります。そして、競技トラックの想定コンディションを増やし、さらにCFDで解析可能な部品数を増加させることによって、風洞テストが必要な部品数を減らせるようになります。この結果、風洞テスト部門の担当者は、風洞テストがよりふさわしい分野にフォーカスできるようになります。」
ホンダの環境保全活動の支援
Altix ICEの卓越したパフォーマンスは、このシステムの購入を導いた重要な要因の1つでしたが、評価されたのはパフォーマンスだけではありません。Honda Racing F1 Teamの2007年の主要な目的の1つは、チーム独自の「アースカー」ユニフォームと、webサイトmyearthdream.comを通して、環境問題に対する認識を高めることです。このwebサイトの訪問者は、環境について学んだり、環境保全を支援するために自らの生活の一部を改善するという誓約を立てることができます。Altix ICEはプロセッサコアあたりのエネルギー効率が最も高いプラットフォームの1つであり、このために、チームの今年の目的を達成する上で最適なシステムであると判断されました。
- Honda Racing F1 Team、テクニカル・インフラストラクチャ部門マネージャ、Matt Harris氏
Matt Harris氏は次のように説明しています。「水冷機能を装備し、電力効率が高いAltix ICEソリューションは、電力効率とパフォーマンスにおいてクラス最高のシステムの1つであり、以前使用していたシステムと比較すると、電力効率とパフォーマンスが共に2倍向上しています。以前使用していたハードウェアと比較してシステムの処理量が5倍に増加し、プロセッサコア数が大幅に増えているにもかかわらず、Altix ICEのエネルギー消費量は、以前のシステムのわずか3分の2であり、可能な限り環境に配慮したシステム環境作りに努力しています。また、ディスクレス・アーキテクチャのAltix ICEの高い信頼性は、他のシステムとは比較になりません。しかも、パフォーマンス低下につながるという情報に反して、このアーキテクチャによって実際にパフォーマンスは向上することが分かりました。」
「他のベンダーについても幅広く検討しましたが、最も包括的で信頼性の高い技術ソリューションと我々が感じたものを提案してくれたのがSGIでした。SGIは我々の要件を適切に解釈し、我々のニーズを即座に理解してくれました。計算性能の向上がもたらす未来が我々にとってどのような意味を持つのかを実際的な見地から考察してくれたベンダーはSGIだけでした。SGIは、ワークステーション、ストレージ、モデルサイズ、将来的な要件、将来的な拡張、将来的に実行が必要となる可能性があること、SGIシステムが計算ソリューションとしてどのように我々の能力を高め、支援できるのか、といった観点から具体的に検討し、提案してくれたのです。ですから、結局のところ、SGIをスーパーコンピュータ・ソリューションのパートナーに選択したことは、今年我々が下した最も容易な決断の1つでした。」とHenrik Diamant氏は結びました。
画像提供:Honda Racing F1 Team
- Honda Racing F1 Team(ホンダ・レーシング・エフワン・チーム)、CFD部門長、Henrik Diamant氏